嬉野にある、建築家吉村順三設計の大正屋に行ってきました

こんにちは!

設計課の橋本です。
今回は、より良い家づくりの為に、
日々、感性を磨いている?かもしれない設計課の旅話です。

一流のものを設計するには一流を知らなければならない。

私が若い頃に恩師より(今も若いはずですが)教わった言葉ですが、正直、若い自分に一流を知るための諸々の余裕はなく直行直帰な建築行脚を重ねる日々でした、、、

それが
少し歳をとり、家族ができ、一人のわがままが通らなくなった時分から旅にもゆとりができ、宿や食にも気が向くようになってきました。

そして近年は、ここぞ!
というときは歴史的建造物や建築家が設計した宿を選ぶようにしており、その歴史や意匠、居心地などを噛み締めるように心がけています。

今回は一年を締めくくるために嬉野にある、建築家吉村順三設計の大正屋にお世話になりました!!!

吉村順三氏の建築は住宅や山荘、宿泊施設といったビルディングタイプが多く、居住空間がテーマの建築が多いという個人的印象でしたので、

名立たる建築家が宿泊施設を設計していますが、その中でも特に「居住」ということに精通した吉村氏の叡智がここ大正屋には詰め込まれており、他と一線を画しているのでは!?という期待感をもって臨みました。

宿につくと、抹茶と和菓子でお出迎え。
ルイス・カーンのフィッシャー邸のような羊羹配置に旅館の方々の建築意識の高さに驚きです。(もしかしたら考え過ぎかもしれませんが)

エントランスロビーや通路、そしてお風呂(お風呂はホント圧巻です)など「共用部の開口部」は壁面が直行しておらず、角度をもって外界と線が引かれており、内外の空間がガラス部に邪魔されないように繋がっています。
廊下の手摺の足は鏡面仕上げで、風景を映すことでその存在感を消そうとしてます。
鏡面は扱いが難しいですね。

なぜかロビーのサッシだけシルバー色で浮いていますが、他は濃色で外部の樹木に溶けています。

お風呂は写真撮影不可なので残念ながら写真がありませんが、浴槽のお湯とお庭の池の水面が、ほぼ同水位になっており、池の中を泳ぐ錦鯉があたかもお風呂の中を泳いでいるような錯視もある名湯で、庭屋一如を水で結んでしまったその手法にただただ立ち尽くしてしまいました。

眼前を鯉がスラリと泳ぎ過ぎた後に、できた水流にのって色褪せた紅葉がスーっと後を追うのを見て秋の終わりを知りました。

部屋は庭に面した1階で、大きな引き違い窓を通して庭へと延びています。
部屋のサッシは濃色で、エントランスと違い、背景の樹木に溶けて目の邪魔になりません。

ロビーはガラス面も広く、目からも遠いので
目が近い客室とは考えが違うのかもしれません。

一つ一つの寸法に重きを置いていたという吉村氏の設計スタンスはこの窓辺に集約されているような気がしており(勘違いかもしれませんが)

一段下がり接地性が増した床に、樹木と適度に距離を設けて置かれた椅子、引込障子とその塞ぎ戸の納まり、引手と施錠を兼ねたサッシ金具etc
その一つ一つがこの居場所を形づくっており、押し付けがましくなく、そっけないわけでもない、この距離感と設えこそが、居住のプロフェショナルだけが紡げる空間性なのか!?と1歳半になる双子の娘達を片手間にあやしながら慌しく思考する師走。

最後に。
使い古された金具が味わい深く酸化し、見るものに平静と懐かしさを与えるように、旅館の方々が長年培い、滲み出るこだわりと配慮が居るものに安息と満足感をあたえてくれる大正屋。

より良いイエづくりのために、日々、感性を研磨(遊んでるようにも見えますが多分違います)。

その大切さを教えてくれて、活力を与えてくれるものそれが私にとっては建築を介した旅です。

みなさまも折に触れて、良い旅を。

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